「身毒丸」について:説話「俊徳丸伝説」から舞台「身毒丸」まで

蜷川幸雄演出「身毒丸」を映像で観て面白かったので
「身毒丸」について詳しく調べてみました。

ネットからの情報ばかりですが、その深い歴史と共に層のように物語に刻まれているであろう人々の思いや願いに多少でも触れることができた気がします。
自分のためのメモを兼ねて紹介します。



「身毒丸」には元になる説話がります。それが「俊徳丸伝説」です。
俊徳丸伝説
河内国高安の山畑(現在の八尾市山畑地区あたり)にいたとされる信吉長者には長年子供がいなかったが、清水観音に願をかけることでようやく子供をもうける。俊徳丸と名付けられた子は容姿が良く、頭も良い若者で、そのため四天王寺の稚児舞楽を演じることとなった。この舞楽を見た隣村の蔭山長者の娘・乙姫は俊徳丸に魅かれた。二人は恋に落ち、将来、一緒になることを願うようになった。しかし継母は自分の産んだ子を世継ぎにしたいと願ったため、俊徳丸は継母から憎まれ、ついには継母によって失明させられてしまった。さらに癩病にも侵され、家から追い出されてしまい、行きついたのは四天王寺であった。そこで俊徳丸は物乞いしながら何とか食いつなぐというような状態にまでなり果てた。この話を村人から伝え聞いた蔭山長者の娘は四天王寺に出かけ、ついに俊徳丸を見つけ出して再会することとなった。二人が涙ながらに観音菩薩に祈願したところ、俊徳丸の病気は治り、二人は昔の約束どおり夫婦となって蔭山長者の家を相続して幸福な人生を送ったとされる。それに引き換え、山畑の信吉長者の家は、信吉の死後、家運が急に衰退し、継母は物乞いとなり、最後には蔭山長者の施しを受けなくてはならないような状態になったという。( 俊徳丸 / Wikipedia より)

「継母の呪い」「若い二人の恋」「愛の力」など、『フェアリーテール』にお馴染みの物語みたい!
最後は愛の力で俊徳丸の病は癒え、継母は不幸に終わります。



説話「俊徳丸」を下地に作られた謡曲『弱法師(よろぼし)』は、「後悔」や「苦悩」が描かれた悲劇になっています。最後、俊徳丸の目は治らず、ロマンチックな要素も見当たりません。
より現実に近づいているのかもしれません。
落語の『弱法師』、三島由紀夫の戯曲『弱法師』の元になっています。

『弱法師』


登場人物
シテ:俊徳丸
ワキ:高安通俊(俊徳丸の父)
アイ:通俊の供人
あらすじ
俊徳丸は、人の讒言を信じた父・通俊により家から追放されてしまう。 彼は悲しみのあまり盲目となってしまい、乞食坊主として暮らす事を余儀なくされる。 盲目故のよろよろとした姿から、周囲からは弱法師と呼ばれていた。
陰暦2月彼岸の中日、真西に沈む夕日を拝む為、俊徳丸は四天王寺を訪れた。 天王寺の西門は極楽浄土の東門と向かいあっていると信じられていたので、落日を拝む(日想観(じっそうかん))事で極楽浄土に行けると信じられていたのだ。 この日の四天王寺は日想観を行う人で賑わっていた。
そこに俊徳丸の父、通俊が現れる。 通俊は俊徳丸を追い出した事を後に悔いるようになり、四天王寺で貧しいものに施しをすることで罪滅ぼしをしようとしていたのだ。 俊徳丸に気付いた通俊だったが、乞食になり果てたわが子に話しかけるのをはばかり、日が暮れて人目が無くなるのを待つ事にする。
俊徳丸が日想観を行うと、祈りが通じたのか、これまで見えなかった目が見えるようになる。 気分が高揚した俊徳丸は、あちらこちらへと歩きまわり、周囲の景色を見てまわる。 しかし、行き交う人々にぶつかってよろけ、現実に引き戻される。 目が見えたと思ったのは、ただの錯覚だったのだ。 そんな俊徳丸を見て周囲の人々は嘲笑う。 彼は二度とうかれまいと暗々たる気持ちになる。
日が暮れ、一人たたずむ彼に父の通俊が話しかける。 話しかけられた俊徳丸は、乞食の我が身を恥じ、よろよろとしながら、あらぬ方へと逃げてゆく。 通俊はそれに追い付き、彼を家へと連れて帰るのだった。( 俊徳丸 / Wikipedia より)



説経節『しんとく丸』
現代語で読みやすく書かれているページがありました。ありがたい!
現代語訳説経節(伊藤比呂美【説経節】)
しんとく丸 その1 信吉長者が清水寺で子だねを授かる 
しんとく丸 その2 しんとく丸が生まれ育ち、そして恋をする
しんとく丸 その3 乙姫との恋と母の突然の死
しんとく丸 その4 継母の呪いでしんとく丸は...
>しんとく丸 その5 物乞いとなったしんとく丸を乙姫が追う
しんとく丸 その6 乙姫はしんとく丸を抱きしめて...

しんとく丸の本(楽天より)


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余談:説経節について
音声をもって日本の仏道を隆盛たらしめるもの・・・・・・
説経の者は、中世にあっては「ささら乞食」とも呼ばれた・・・・・・ささらとは、楽器というより本来は洗浄用具であって、茶筅を長くしたような形状をしており、竹の先を細かく割ってつくり、左手で「ささら子」または「ささらの子」というギザギザの刻みをつけた細い棒でこすると「さっささらさら」と音のするものである・・・・・・
中世日本における民衆生活は、商行為としての人身売買が存在しており、また、たび重なる戦乱や一揆のなかで抑圧され、蔓延する疫病や頻発する災害に打ちひしがれる悲惨なものだったのであり、人びとが現世に希望をもてないことも多かったと考えられる。したがって、説経節の語り手のみならず、それに耳を傾ける聴衆もまた、社会的に底辺に近い人びとが多く、主人公の悲惨な境遇や果敢な行動に共感し、身につまされては泣き、あるいは、過激なまでの復讐に溜飲を下げ、そこから自らの魂を解放させていたと考えられるのである。・・・・・・
古説経は、神仏が神仏になる以前、人間であったときの苦難の生を語るという「本地物」の構造を備えており・・・・・・神仏が前生(前世)において人間として数多くの苦しみや困難を味わったからこそ、同じく悲惨で苦渋に満ちた生を送る一切衆生を救済する力があるという思想にもとづいていた。・・・・・・
説経節の起源は古く、鎌倉・南北朝の時代にさかのぼるものの、乞食芸能として民衆の底辺にあり、日本文化史においては長く埋もれた存在であった。・・・・・・
説経節の演目はのちに近代小説の題材ともなった。
説経節とは(Wikipedia)

五説経(説経節の代表作5作)は、
  • 古くは『苅萱』『俊徳丸(しんとく丸)』『小栗判官』『山椒大夫』『梵天国』
  • 享保のころは『苅萱』『山椒大夫』『愛護若』『信田妻(葛の葉)』『梅若』
  • 水谷不倒(国文学者、小説家)によれば『苅萱』『山椒大夫』『小栗判官』『俊徳丸』『法蔵比丘(阿弥陀之本地)』

現代の説経節
  • 小説『山椒大夫』森鷗外
  • 小説『身毒丸』折口信夫
  • 舞台作品『身毒丸』寺山修司・岸田理生脚本
  • 仮面劇『小栗判官照手姫』遠藤啄郎脚本・演出
  • スーパー歌舞伎『オグリ』梅原猛作


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人形浄瑠璃(文楽)、歌舞伎の『攝州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)』は
『しんとく丸』『愛護若』が元になっています。

『しんとく丸』『愛護若』の共通点は「少年」と「継母」と「継子いじめ」です。
そして、どちらも悲劇的に描かれています。
折口信夫 愛護若 (青空文庫)

『攝州合邦辻』
俊徳丸は継母(玉手御前)に言い寄られますが拒否します。
そして、玉手御前の企みにより、らい病にかかり家を出て、目も見えなくなります。
追ってきた浅香姫と再開しますが、そこに玉手御前が現れ、俊徳丸を我がものにしようとします。
ところが、最後は大どんでん返し。玉手御前が死に際に明かします。
それは、すべて継子である俊徳丸と腹違いの俊徳丸の兄を救うための芝居だったというのです。
そして、最後はハッピーエンドに終わります。
摂州合邦辻について(Wikipedia)


「しんとく丸」に「身毒丸」の文字を当てたのは、折口信夫(おりくちしのぶ)の小説「身毒丸」です。
折口信夫は俊徳丸伝説から仏教的・教義的な要素を取り払い、近世芸能の原始的なかたちを再現することを意図して短編小説「身毒丸」を書いた(大正6年発表)( 俊徳丸 / Wikipedia より)



小説「身毒丸」のあらすじ、たぶんこんな内容だと思います
が、間違ってたらごめんなさいm(_ _)m
わたしの頭には難しすぎでした(;一_一)

「身毒丸」


身毒丸の父親は田楽師で、父親も身毒丸も先祖代々からの病を患っていました。
美しい外見を持った儚げな少年が、舞台上では力強く舞い踊る美しさ。そんなイメージでしょうか。

父親はこの血を絶やしたいと思っていたが、結局、身毒丸が生まれる。その父は身毒丸が9歳の頃いなくなります。
病で他界したのかと思ったけど、実は姿を消したままその後は分からないようです。

父親は身毒丸に清く生きることを望んでいたが、その容姿の美しさから女性にモテモテで、そのために心が翻弄されます。
父が去った後のまま親で、師匠の源内法師に厳しく指導を受けるが、源内法師の内心は身毒丸がかわいくて仕方ないようです。
けれど、身毒丸の心はささくれ立っていて、旅先で先輩と言い合いになります。
いつも厳しい源内法師ですが、身毒丸の大人になった姿を見て、唸るような言葉を言うに留まります。
この時、源内法師は身毒丸を大人と認め、身毒丸もそれを感じたのかもしれません。

身毒丸は後悔する中で夢に懐かしい父の顔を見ます。
そうして身毒丸は「決心」します。
『身毒は立ち上つた。かうしてはゐられないといふ気が胸をついて来たのである。』



身毒丸/折口信夫 (青空文庫)

こちらでは「身毒丸」を現代用語にして、解説も入れてくれてます。
これがないと、半分も意味がわかリませんでした(汗)
四天王寺(その9折口信夫の小説「身毒丸」(劇場国家にっぽんブログ)

小説「身毒丸」は「母」よりも「父」の姿が濃く描かれているようでした。



舞台「身毒丸」については前の記事「身毒丸」について:舞台「身毒丸」

身毒丸のまとめ記事がありました。
『身毒丸(しんとくまる)』って何なのか?の基本のまとめ(NEVERまとめ)

物語の歴史をたどると、またそれがひとつの物語となり、その物語は人々の「思い」からできているのですね。
記憶の中の「思い」は水のようでもあり、風のようでもあり、土のようでもあるように思います。
それを受け止めるには、受け止めるための器を持っていなければできないなぁ、わたしにはまだそれが無いなぁ、なんて、未熟さを感じています。
でも、もしかしたら別な形で受け取ることができるかもしれません。
そうしたらその時は、Wikipediaに追加されるような作品になったらいいな。

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<7netより>


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